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Thursday, April 23, 2009

患者さんから学んだこと

優子さあ、

なんかなー、今日も一日クリニックでいろんな家族と会っていたんだけど。

家族療法ってのは、うつだったり、子どもの不登校やひきこもりとか、いろいろな精神的な問題に対して、家族の力で乗り越えていこうという考え方なんだ。家族ってすごいというか、両刃の剣だと思うんだ。すごい潜在力を持っているよ。家族の問題に直面しても、それを乗り越えるだけの集団の力というのかな、そういうのをどこの家族でも潜在的に持ち備えているはずなんだ。でも、その逆に家族関係が裏目に出てしまうと、家族の健康を損ねてしまうというか、家族の誰かがスケープゴート(生贄の子羊)としていろんな問題が生じてしまう。

クリニックではいろんな家族に出会うよ。夫婦のことが話題に出ると、話を聞きながら優子のことを思っちゃうんだ。本当は診療中に優子が出てきてあまり邪魔してほしくないのだけど、それは仕方がないよね。臨床家としては、まったく自分の体験から切り離して考えることは出来ないわけで、自分の家族体験が肥やしになっていると思うんだ。

本当は、どの家族も、夫婦がうまくいって、協力したいと思っているはずなんだ。でも、実際はなかなかそううまくいかないんだよね。子どもの問題で、今まで疎遠だった夫婦が団結できたり、両親を呼んできてふたりで協力させようと思ってもうまくいかなくて、実は夫婦間に隙間風が吹いていたり、もっとひどければ離婚寸前だったり。離婚できればいいけど、離婚するパワーと勇気さえ持ち合わせていなかったり。
どうしてそうなっちゃうんだろうと考えると、別に特別な事情があるわけではない、なにか深刻な病気とか異常がもともとあるわけじゃない。
仕事が忙しかったり、姑との関係がうまくいかなかったり、子離れできない親が影でじゃましていたり、子ども時代の不幸な体験を引きずっていたり、子ども時代に両親が不仲で、夫婦協力する適切なモデルを示せなかったり、
こういうのって、どこでもあるよな。それが、ちょっと悪循環のスパイラルにはまっちゃうと、はじめは些細なことが10年、20年と家族をやっているうちに、元に戻れないほどおかしくなっちゃったりするんだ。

優子と僕のことも、考えたりしているよ。ずいぶん、患者さんたちから僕は学ばせてもらったかな。たいてい反面教師としてだけど。もともとは、素敵な仲だったはずなんだけど、ああ、こういうことが重なっていると、だんだんと悪循環にいとも簡単にはまっちゃうんだろうなって。具体的にはどういうことかというと、

・懸案事項は我慢せずに、ちゃんと消化すること
・コミュニケーションは大切
・男と女はどう考えても渡れぬ川、というか、考え方、感じ方にはギャップがあるんだな
・家族のために仕事をしてるんだけど、やはり家庭で接する時間が十分でないと、いくら内心はがんばっていてもダメなんだ
・自分の親との関係はよく整理しておかないと、ごちゃごちゃになっちゃったりする

でも、一番大切なのは、向き合う勇気を持つってことかな。その相手はパートナーだったり、自分の子ども、自分の親、職場・学校、いろいろあるし、最終的には自分自身に向き合うことだよね。向き合うのはやばい、不快感が伴う、いろいろ目をそむける理由はあるのだけど、ごまかしちゃダメね。多少の痛みや不快感を伴ったとしても、ちゃんと向き合うべき時は向き合い、問題がまだ小さいうちにちゃんと処理しておかなくちゃ。心の問題や、夫婦関係って、虫歯と同じで、ほうっておけば自然にどうにか治るわけじゃないんだ。

というようなことを、僕は患者さんたちから学んだかな。それを優子との関係にも応用しようとしたと思うよ。やってることは、複雑なことではなくて、ごくごく単純なことのはず。でも、単純だからこそ、できないんだよね。だれでも。

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