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Tuesday, July 26, 2016

おばあちゃんと墓参り

に行ってきたよ。

ばあちゃんにとっては4月の納骨以来、初めての墓参りだ。じいちゃんが亡くなってからほぼ半年だよ。もうちょっと近ければ気軽に行けるんだけどね。


人の世話になりたくないばあちゃんとしては、今回電車とバスで行く予行演習をして次回からは一人で行けるようにしたかったみたいだけど、諦めたみたい。方向音痴で最近はめったに電車さえ使わないばあちゃんにとって、やっぱ無理だな。

ばあちゃんはお墓の前でハンカチ出して、静かに泣いてたよ。何も言わずに。

ふだんこうやって涙を流す機会もあまりないしな。

♪ 私の~お墓の前で~、泣かないで下さ~い。 

とか歌にもあるけど、実は泣いた方が良いんだよ。
死んだ人にしてみれば、自分のお墓の前でいつまでもビービー泣かれるのはイヤだろうけど、遺された人にしてみれば、辛いけどやらなくちゃいけないプロセスなんだ。

大切な人を失うと、心のタンクに哀しみが溜まり、心が重たくなってうまく動かなくなる。
タンクの蛇口を開けて、溜まった涙を流してやらなくちゃならない。別にわざわざ蛇口を開けなくても、時間がたてば少しずつ自然に蒸発していくから、何とかなるんだけどね。でも、時間がかかるし、思い切って出しちった方が、その時は辛いけど、後が楽なんだ。

パパも今回お墓参りして、多少は悲しくなるかなと思ったけど、もうなれないんだよね。
べつにもう優子はどうでもいいし、じいちゃんはまだ半年だからお名残り惜しいかなと思ったけど、そうでもないんだ。もう二人とも、天国で勝手に楽しんでいてくださいって感じで。

優子、じいちゃんゴメンなさい。

泣きたくても泣けないってのも、ちょっと残念だよね。
やっぱしちょっぴりは悲しくなりたいというか、悲しみもパパの人生の一部として取り込んでいた方が、まっとうなような気がするんだよね。

あとは、ばあちゃんをどうやってあっこばちゃんのとこへ連れていくかだな。
パパの時は、あらゆる人々を使って悲しみを出しまくっていたけど(ちょっとやり過ぎたかな!?)、ばあちゃんの場合、それができる相手は極めて限られているんだ。友だちだってあまりいないし、子や孫や、気心の知れた甥・姪くらいなもんなんだ。
その中でも、ばあちゃんが同じ目線で気持ちを許せ合えるのが妹のあっこばちゃんなんだ。

ばあちゃんは四国に行きたくても、タケシの世話になりたくないとか突っぱねるし。
どちらにせよ、パパは秋にしまなみ海道でチャリの大会があるから、その時にばあちゃんを連れていけば問題ないんだけどね。

ばあちゃんは、四国ののんびりとした田舎町で生まれ育ち終戦を迎え、しばらくしてからお見合いでじいちゃんと結婚して、単身東京にやってきたんだ。当時の愛媛・東京間は、今の東京・メルボルン間より遠かったんじゃないかな。ずいぶん寂しかったと思うよ。
当時、女性としてはめずらしく四大を卒業したのに仕事もせず、専業主婦として子どもを作り、夫を支え、60年間ずっと東京で暮らしてきた。おかげでじいちゃんはしっかり社会に貢献して、ふたりの子どもも、まあ無事に育って、5人の孫もいる。

先日、ばあちゃんは
「もう私はいつでも、おさばらしても良いと思ってるから。」
とか言っててね。
たしかに、夫を見送り、子どもたちを船出させ、楽しいことも辛いこともいろいろあっただろうけど、ばあちゃんの時代の規範に照らせば、ちゃんとやるべきことをやって、人生の目的を全うしたんだよ。身体は健康だけど、聴力も体力も精神力も弱くなり、世の中に付いていけなくなっちゃって、どんどん取り残されるし、生きていても新たな楽しいことが生まれるってわけでもない。ばあちゃんの気持ちもわかるし、無理にお引き留めする必要もないわけなんだけど。

ばあちゃんには、静かに、安定して山を降りて行ってもらいたい。

じいちゃんの時もそうだったよね。
少しずつ自分を失っていく。社会的役割も、体力も、健康も、気持ちも、意識も、、、。痛みを伴わずに失えるって、けっこう難しいと思うよ。

子どもが成長して、自分を獲得していくプロセスもけっこう大変だし、痛みを伴う。今、子どもたちは3人ともその最中なんだよ。自分たちは夢中でわからないだろうけど。
子どもが大きくなるとき、親やまわりの支えが必要だったのと同じように、
老親が小さくなっていくとき、だれかの支えが必要なんだ。その役目は子どもが担ったりするけど、子どもがいない場合だってあるしね。

ばあちゃんが故郷に帰って、子ども時代に戻ったら、楽に小さくなれるんじゃないかなと思ってね。
でも、ばあちゃんの故郷の生家も両親もなくなっちゃって、唯一残っているのが、あっこばちゃんかなと思って。

先日、ばあちゃんの本家の甥が四国から来てくれてね。甥姪4人を集めて会食したんだ。短い時間だったけど、ばあちゃんは楽しかったみたいよ。その後、
「また、時にはああやって会食しようね。」
と言ってるんだ。

キミたちも、ママのお墓参りする時には、ばあちゃんを連れて行ってやってね。