Send your message to lettertoyuko@gmail.com


Monday, March 10, 2014

ホテルピアノ

そう、あの席だったよ!
あそこで、Uご夫妻と、優子と、やっと1歳のお誕生日を迎えた全と一緒に夕食をとったんだ。その写真が残っている。あそこの席で写真を撮ったんだよ。ソファの席だったからよく覚えている。

20年前の記憶がフラッシュバックのように甦ってきた。なぜか涙も吹き出してきた。

キロロリゾートのホテルピアノは20年前はデラックスホテルだったけど、今となっては設備も古さが目立つ。
いや、まだ立派ですよ。良いですよ。でも部屋でネットは使えないし、温泉設備やレストランは吹きっさらしの寒いソトに出て行かなければならないし、20年のギャップはいたしかたない。
でも、私は20年前も、今も、あるいは40年前からずっとスキーを続けている。それは変わらないんだ。20年前は優子とちゅけと、Uさんご夫妻とNちゃんと。Uさんの奥さんがホテルでちゅけの子守りを手伝ってくれて、優子とボクが交代でスキーをしたんだ。
今回は、私とUさんとふたりだけ。Uさんの奥さんは、冬の外出は避けたいと不参加。Nちゃんも不参加。ちゅけを誘ったら、はじめは「うん、行こう!」とか言ってたけど、友だちとフィリピンにダイビングに行くというので不参加。優子も天国にいるから不参加。残ったのは男ふたりだけ。でもいいよね。それでもやりましょう!

そのちゅけは、北海道で自立してしまった。家を出て行くとき、今に並んでいるたくさんの家族写真の中から、どれか持って行っても良い? おお、どれでも好きなのを持って行きな! 選んだのは、優子と私の間に挟まれ、満面の笑顔の赤ちゃんの全。北海道の下宿に訪ねると、それが飾ってあった。そうだよ。君は無条件に愛されたんだよ。父親と母親から。そのことは、自信を持っていい。親から離れても、親が遠くにいても、天国にいても、君が生まれた時から限りなく愛されているということは、疑いのない事実だ。そのことは自信を持っていい。

パパは、そのレストランにひとりで朝食をとっている。たまたまノートPCを朝食会場に持ってきたんだ。だから、食後のコーヒーを飲みながら、20年前の思い出のテーブルの横で、涙を流しながらこれを書いている。今も、小さな子ども連れの家族がそのテーブルで食事をとっている。

20年前、優子と私は自信なんか何もなかった。そしてちゅけが生まれた。それはかけがえのない喜びであったことだけは自信があった。でも、どうやって子どもに向き合ったら良いのか、どうやって子どもを育てたら良いのかなんてよくわからない。ただ、できることを何とかやっていただけだった。家族と一緒にいたい。子どもを育てなければ。でもスキーもしたい。優子はべつにしたくもなかっただろうけど、息抜きの旅行だってしたいよな。北海道に行こう。Uさんたちとスキーに行こう。まだ1歳になったばかりの子どもをどうやって連れて行くの?スキーなんて無理でしょ。いや、Uさんたちと行けばなんとかなるよ。わざわざ飛行機に乗って、札幌まで来て、さらにその奥のスキー場まで行って。

この記憶は、パパにとってもとても大切なんだ。子どもを無条件に愛したという記憶は、親にとっての自信にも繋がる。
優子も無条件に愛したんだろうか?無条件じゃあなかったよな。条件付きだった。子どもへの愛と、パートナーへの愛は、ぜんぜん違うでしょ。