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Tuesday, March 24, 2009

西魔女と日本男児

優子

西魔女のところに行ってきたよ。月1回のペースで、今回が3回目。回を重ねるごとに回復してるよ。一回目は泣きっぱなし、二回目は泣かないつもりが話しているうちに感極まってしまい、今回は泣かずに済んだよ。別に、泣く・泣かないで回復を判断するわけじゃないけど。
西魔女はなかなか良いことを言っていたよ。(そりゃそうだ、悪いことは言わないだろう)
西魔女は、本当に西洋の魔女なんだけど、彼女から見ると、日本のお葬式は喪の作業を進めるのにうまくできているんだって。まず、火葬して骨上げするでしょ。とても辛い瞬間だけど、遺体が焼かれることにより、その人の死を受け入れやすくなるんだって。西洋では、昔は焼かずに埋めちゃったり、火葬する場合でも火葬場に遺体を預け、あとで遺骨入れにおさめた状態で引き取るので、骨上げという習慣がないんだって。
焼かなかったら、また生き返るんじゃないかって、いつまでも心の片隅で思ったりするみたいよ。そりゃそうだよな。科学的に考えても、DNAがまだ残っていたら、将来、遺伝子を再生してクローンを作れるかもしれないなんて考えることもあるでしょう。
優子がお釜に入っていくシーンは子どもたちには見せなかったよ。僕自身、45年前、祖母のお葬式でそのシーンを見たのがトラウマになっちゃったからね。身体がこれから燃えてなくなっちゃうんだというのは心情的にきついよ。
でも、焼きあがったお骨を拾うのは、子どもたちにも参加させたよ。ママがお骨になっちゃった。つらいけど、そうやってママとさよならしなくちゃいけないんだ。
あと、四十九日とか、一回忌、三回忌と、定期的に法事を行うでしょ。こういう習慣も西洋にはないんじゃないかな。ときどき集まって喪を進めることができるからね。

僕も、ようやく優子の死を認めつつあるみたい。夢の質が変わってきたんだよね。最近、夢の中に優子が出てきても「また、甦ってくれる?」「次は、いつ頃、甦るの?」って聞いていたんだ。つまり、やっと夢の中でも優子は死んで、仮の姿として出てくるようになったんだ。以前だったら、夢の中の優子はリアルな現実で、生き生きと甦らせていたんだよ。

それに、西魔女はブログのことも、すごく良いって言ってくれた。
書くことの効果、そしてそれを支えてくれる人たちと共有する効果は大きいよね。
それだけじゃなく、にして出すべきだって。
後から振り返る記述じゃなくて、リアルタイムで今、体験していることを書いているでしょ。その臨場感は確かにあるよな。
それに、日本人であること、男性であることにも価値があるって。
英語で出せと言われたよ。確かに、欧米人から見たら日本人のことはわからないからね。
それに、この手の本は洋の東西を問わず、女性がほとんどだし。
男性も、これだけ感情を深めることができるんだってことは、口下手な男性というイメージを乗り越えるからね。西洋人にとって、日本人の男性は、過労死、モーレツサラリーマン、特攻隊、ハラキリとかろくなイメージはないからね。あるいは、川端とか三島とか、耽美的で結局は自殺しちゃうイメージ?

いくつか、日本の男の本も読んでみたよ。
●城山三郎「そうか、もう君はいないのか」新潮社、2008年 ★★☆☆☆
妻との出会いから、ガンを宣告され、闘病の末、亡くなるまでの手記。巻末の娘のあとがきによると、城山は妻を失った後も、妻の死を拒絶し続け、その7年後に病死するんだ。

●江藤淳「妻と私・幼年時代」文春文庫、2001年。 ★★☆☆☆
妻の病気が発覚し、亡くなるまでの半年間のプロセスが描かれた「妻と私」。その後の「幼年時代」では4歳で亡くなった母親のイメージを甦らせようとするが絶筆となり、妻の死から9ヶ月後に自殺している。彼は重症の愛着障害だったのかも。そのトラウマが原動力となり、才能を開花させたのかもしれない。母親への愛着の代替であった妻を失ったのは致命的な打撃だったのでしょう。必死に、母親を呼び戻そうとしたのが、途中で挫折した「幼年時代」だったのでしょう。巻末に石原慎太郎が「痛ましくも、美しい」なんて。自殺を美化する日本的なパターンはダメじゃない!!

このふたつに共通しているのは、妻が死に至るまでのプロセスは詳細に記述されているのに、死後、本人に起きた心情の移り変わりはほとんど記載されていないということ。そっちのほうが大切なのに。評論あるいは歴史小説という分野では一流だけど、喪の仕事は中途半端。自身の心情は記述できなかったみたい。能力の有無とは関係なく、とても難しいんだよな。ナイーブだからこそ、文学者になれたんだよね。僕はナイーブじゃないから、書けちゃうのだろうか。もっとも、亡くなる前のプロセスは皆無だったから、亡くなった後から始めるしかなかったわけだけど。

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