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Wednesday, February 11, 2009

griefとmourning

優子、おはよう。

これから優子多摩サイを通って大学に出勤だ。祝日だけど卒論発表会があるんでね。
終わったら学生たちの打ち上げには参加せず、すぐ帰ってくるよ。

今、遊馬がミスチルを部屋中に流している。最近、ミスチルばっかりだよ。
優子のiPodに入っていたラフマニノフのピアノ協奏曲、いいねえ。今まであまり知らなかったけど。
なんか、音楽がビンビン僕の感性の中に入っていくよ。曲を聴くだけで泣けちゃうんだ。

優子、僕はさ~、自分で言うのも変だけど、かなり適応力はあると思うんだ。
海外に住んでも、なんとなく適応できちゃうし、今だって、抑うつ状態に陥ることなく、仕事したり、子どもたちの前で笑顔を見せながら家事をこなしたり、たくさんの人に助けを求めたりできちゃう。
でも、それがかえって良くないみたい。
表面のつじつまを合わせてしまうので、その奥にある問題が見えにくくなってしまう。
心の中が、すごく重いんだ。なんだかよくわからない塊が詰まっている感じ。
それが、悲しみなのか、喪失感か、不安か、恐れか、怒りか、よくわからない。
それをどうにかして吐き出そうとするんだけど、うまく出てこないよ。
こういう関係の本って、たくさんあるんだね。こんなにあるとは知らなかった。
何冊か買って読んでみたけど、最後まで読み進められないんだ。
体験者の話を聞いても、何か自分とは違うような気がするし。
たいていそういう本は二部構成になっていて、前半は悲しみや喪失感の様子が、後半になると、そこから立ち直っていくプロセスが書いてあったりする。前半は読めても、後半の部分まで読み進められない。

はっちゃんがくれた本、読んでみたよ。その中に書いてあったんだ。griefとmourningは違うんだって。
両方とも日本語に訳せば悲嘆・悲しみだし、英語でも同じように混同されて使われているらしい。
でも、本当の意味は、違うんだって。

Griefは、たとえば愛する人の喪失を経験した人の中に起こる反応なんだ。行動面では仕事に行けなくなるとか、家事ができなくなるとか、眠れなくなるとか。また心理面では、やる気がなくなるとか、悲しくなって涙が止まらないとか、いろいろあって。
一方、Mourningとは、その悲嘆反応(grief)を表す行動すべてなんだ。喪に服すとか、お葬式や仏壇をつくるとか、亡くなった人の話を誰かとするとか。
このふたつの何が決定的に違うかというと、griefはその人の心と体の中に詰まっているもの、つまり内側の出来事で、mourningとは、それを表現する、つまりその人から出ていく過程を表し、外側の出来事なんだ。

そういう意味じゃあ、僕はかなり重症な心の便秘症だよ。
心にでかい塊がどっさり詰まっているのに、それを出せないまま、馬力で無理やり動いちゃっている。だから、ますます出せなくなり、思い塊を引きずって毎日を過ごしているみたい。
なんか、苦しくて....

僕の昔の手帳を引っ張り出して来て、年譜を作り始めたんだ。
優子と初めて知り合ってからの出来事を時系列で並べていく。
幸い、僕も昔の手帳だけは取っておいたので、それを眺めなおしているよ。いろんなことが見えてくる。
そして、優子と僕の軌跡を子どもたちに伝えなくっちゃ。
それは、僕自身のmourning workでもある。

1 comment:

  1. 休日なのに卒論発表会とは大変ですね。

    griefとmourningの違い、なるほどと思いました。

    Tikiさんのmourning workがうまくいく事を祈っています。

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