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Tuesday, February 3, 2009

やっとひと月

優子

今日で、優子を失いひと月になる。
この一か月、長かったよ。
ずっしりと重い悲しさと辛さを引き摺り、一日を進めるのがたいへんだった。
優子がいなくなる前の日常は意識せずとも自然に飛んで行ったけど、この一か月は、毎日が重すぎて、一生懸命、意図して引っ張らないと進んでくれないんだ。

イメージとしては、火事で自分の家を失った人が、何が何だかわけが分からず、火事場の周りをぐるぐる意味もなく走り回りつづけているような。
きっと、周りから見れば、そんな風に見えるんじゃないかなと思うよ。
自分自身、まだ、何が起こったのか、冷静には理解していないんじゃないかと思う。
でも、立ち止まり、そのことを見てしまうと、もうそこから一歩も動けなくなるんじゃないかと不安になる。
まだまだ、ちょっとでも心に隙間ができると、優子風がすっと入りこんで来て、悲しみに満たされてしまうんだ。
でも、たぶん、僕はこれからもゆっくりしたり、立ち止まることができないんだろうなって思うよ。
幸か不幸か、そうできちゃうだけのエネルギーを持っているし。
まわりからすれば、痛々しく見えるかもしれないけど、しょうがないよ。僕の性分なんだ。

この一週間は、大いに走り回るイベントがあるんだ。昨日から始まっているんだけど。
海外からの家族療法家を4人招いて、集中的なケース会議をするんだ。
当初は、沖縄で開く予定だったけど、とても子どもたちと離れることはできなくなったので、急きょ、東京に変更したんだ。僕の研究費で招へいするから、すべてキャンセルすることもできたのだけど、僕にとってとても重要な会議なので、がんばって開催まで漕ぎ着けたよ。
ね、わけもなく走っているでしょ。
でも、これは仕事モードの冷たい会議ではなく、感情モードをたくさん使える温かい会議なんだ。アメリカのデイビッドは15年前から、イスラエルのカウラは5-6年前から、韓国のヨンジュは2年前から、そして台湾のピンシュワンは去年から、学会などで一緒に活動してきた仲間たちで、お互いに気心もよく知れている。そんな仲間たちを、自宅の近くのホテルに泊めて、昨日・今日は自宅に呼んで会議をしたんだ。だから、優子の遺影にも、じじばばにも、子どもたちにも紹介できたし、とてもat homeな雰囲気で話し合いを進めることができたんだ。
この会議のやり方は、4-5年前からデイビッドたちと一緒にやっているんだけど、とても面白いんだよ。各自が、自分が関わっている家族療法の例をひとつ持ち寄り紹介するんだ。うまくいったケース、いかなかったケースなどどちらでもいい。自分の文化的枠組みでは当然のことも、他の文化からみると、えっ、どうして!?という唖然になったりする。自分では当たり前と思う家族模様が、他の文化の基準に照らし合わせるととても特異なことだったりする。そういう新たな発見を掘り起こしてくれる会議なんだよね。

今回は新たな試みとして、治療者として関わった家族の例を出す前に、自分自身の家族体験を掘り起こし、みんなで語ろうということになったんだ。これは、僕が提案したのだけど、当然、優子のことを語らなければ先に進めないからね。優子のことはみんな知っているし、とても近しい所に居る。お葬式の遺影の写真も、11月の韓国旅行で今回参加しているヨンジュも一緒に会食したときなんだ。しばらくぶりに、しっかり喪失の悲しみを身体で表現でき、すっきりしたよ。
でも、悲しみを持っているのは僕だけじゃないんだ。5人がそれぞれ自分の家族体験を話す中で、程度や内容はさまざまだけど、みんな傷ついている。西の魔女がWounded Healer(傷ついた治療者)と言っていたけど、自分が持つ傷を隠すことなくしっかり味わえば、相手の傷をうまく癒すことができる、良い治療者になれる。つまり、この大切な作業は、自分の傷を癒すだけでなく、臨床家としての成長につながることなんだ。

夕食は、近所のスーパーでお肉とお刺身のお造りを買ってきて、近所の八百屋さんで野菜をたっぷり買ってきて、みんなですき焼きやったんだよ。子どもたちも参加して、楽しかったね。ちょっとお醤油入れ過ぎちゃったけど。英語しゃべれなくても、子どもたち、みんなと親しんでいたよ。彼らも、子どもたちの目と表情がとても良いって言っていた。言葉が通じない分、まなざしとか表情がよく見えてくるのでしょう。子どもたちにとっても安心できる場であったらよかったんだけど、どうかな??

こんな感じで、土曜日まで彼らと行動を共にするよ。
もう、走るしかないね。

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