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Saturday, May 23, 2009

予期不安

ひとみさん曰く:
> 考えちゃってる訳でも、尻込みしている訳でもないんですよ。
> なにもかもが、楽しい。
> 振り返らなくても、現在進行形で幸せ。

だったら、全然問題ないんじゃない?
今を楽しめば良いんですよ。

予期不安=悲観的なことが将来起きるのではないかと想像すること

優子が、こんなことになるなんて、全く想像していなかったよ。
でも、それは医学的には正しくないんだ。
僕の医学部時代の中途半端な知識をもってしても、こうなることは想像できたはずだ。冠状動脈が多発性の狭窄を起こし、20年前にパイパスとステント術で一番の狭窄部位はなんとか広げ、血行状態も日常生活に全く不便がない程度に維持されているものの、動脈造影でみれば、狭い部分はたくさんあった。主治医も「グラフト(移植した血管)もだいぶ痛んできたし。どうしようかなあ。」とは言うものの、とりあえず現在、問題なく生活しているから、それ以上、何か治療すると判断しにくかったのだと思う。もしやるとしたら、さらに別のバイパスをくっつけるか、さもなければ心臓移植??しかし、これらの治療にはリスクが伴う。かえって悪化する可能性だって。あと、○年しかもたないとか、現在の心機能が低下し、痛みや苦しみがあるとか、日常生活が制限されるのであれば、あえてリスクを伴う治療も考慮しただろうけど、とりあえず、ぜんぜん困らず、しっかり生活していたんだもの。
冠動脈パイパス術は、ふつう動脈硬化に伴う高齢者に行われるから、20年後、30年後にどうなってるかというデータはほとんどない。しかも、川崎病に伴う多発性の動脈瘤のケースはなおさらだろう。だから、優子の病気は、進行していく癌のように「余命あと○年」というものではなく、「血管が詰まる可能性は一般人よりはるかに高いけど、詰まらなければ問題なし。詰まっちゃったらオダブツ。その詰まっちゃう確率だって、よくわかっていない。」という程度の判断になるのだろう。少なくとも、この20年間はセーフできたからね。かといって、これからの10年、20年がセーフか、アウトかってことも全くわからなかったんだ。とまあ、僕は理解している。
優子の病状をよく知っている友人のりゆき医師と飲んだ時に、
「おまえ、奥さん、ヤバいんじゃないの?」
と言われたって、
「ああ、そうかもね。」
と返すだけ。何も予期不安はなかったよ。
そうなることは、予想できたけど、予想しなかったから。

> 幸せって、貯金みたいなものなんですかね?
> 貯められるときに貯めておいて、不測の事態に備える?

いやあ、僕はわりと現金主義というか、幸せは貯められないと思うよ。利息もつかないし。
虫歯を考えてみましょう。
いくら、20年間健康な歯だって、いったん虫歯になったら痛いからね。20年間の貯金なんか役立たないよ。
第一、幸せって、その最中は、幸せだって感じないでしょ。
幸せになったとき、たとえば独身から結婚して二人になったときとかは感じるけど、新婚時代が終わり、結婚生活が当たり前になっても、相変わらず「幸せだ、幸せだ」とは感じていないでしょ。

僕らのことも、今だから、優子が死ぬ前は幸せだったとか、優子は幸せな死に方をしたとか言えるけど、優子が生きていた時は「幸せ」とか思わなかったよ。

要するに、幸せは貯められません。
過去がどうであれ、今、現在、幸せかどうかが大切です。
逆に考えれば、過去がどんなに不幸でも、たとえ大切なものを失っても、
それを切り離すことができて、現在が幸せなら、幸せになれると思います。

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