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Sunday, May 17, 2009

「婚活」時代:中年オトコ編:その1

このエッセイは、妻を亡くして、中年になってから結婚しようとする人のために書かれた客観的な論文の形をとりながら、実は筆者自身の気持ちを整理しているのである。

「婚活」時代(山田昌弘・白河桃子著。ディスカヴァー携書, 2008)
 この本を要約すれば、男女交際やライフスタイルが自由化し、結婚が人生コースの必須アイテムから選択肢となったために、昔のように当たり前のこととして自動的に出会いの機会があり、結婚できる時代ではなくなった。だから、がんばって結婚活動しなさいよ、という主旨である。
 山田さんは私と同じ歳である。同じ職場だったので一緒に仕事をしたこともあったのだが、本書にも書かれているとおり、彼は甘い物が好きで、本と書類の山で穴蔵のような彼の研究室を訪ねると、「これ、買ってきたんですよ」と、いつもしゃれた洋菓子を勧めてくれた。ちょっとオタクっぽいところもあるけど、基本的には好いやつだ。「パラサイト・シングル」「格差社会」なども彼が作ったコピーで、流行語大賞受賞学者なんて揶揄されるけど、一般の人にはわけのわからないことを研究している学者にくらべれば、直接社会に役立っているという意味で大切なことだと思いますよ。
 本書は「婚活」という言葉を流行らせた価値はあるけど、内容的にはアエラを読んでいるような陳腐さで、まあ大したことはない。白河さんが、そういうジャーナリストだからね。

中年オトコへのエール
 というわけで、みんながんばって婚活しましょうよというこの本のメッセージになぞらえ、妻を亡くした中年男を応援したい。といっても、自分自身にエールを送っているわけだが。

 中年は中途半端な年代だ。通常、パートナーを失うのは高齢者になってからである。それは悲しいながら、ライフサイクル上、確率約二分の一で起こる出来事である。老年期自体が、自分の人生の総決算、力の衰えを受け入れ、やがて迎える自己の死に向けて心の準備をしていく時期である。自分の社会的地位や収入、体力、健康などを徐々に失っていくプロセスのひとつとして、配偶者も失う。それは、やがて自分自身を失うひとつ手前の出来事として、悲しみを受け止めていくのだろう。筆者は老年期を経験していないので、想像にしか過ぎないが、自分だったらそうしたはずだ。
 それに比べると、中年期はライフサイクル上、まだまだ活躍したい時期である。社会的な役割を担い、子育てもまだ終わっていない。体力、生活力などもまだまだ可能性を残している。その中で、予期せぬ出来事として妻を失ったダメージは大きい。悲しみを乗り越え、残りの人生を組み立てていくには、それまであった妻とのパートナー関係をどうするか、もうあきらめてひとりで生きていくのか、新たなパートナーを求めるのか、重要な決断となる。
 しかし、若い時ほど話は簡単ではない。パートナーになってくれる相手は絶対的に少ないし、体力や気力も落ちている。腹はメタボで、頭髪の生え際は後退し、風貌もかなり老けてきている。そんな自分を好きになってくれる女性なんているのだろうか。自信をなくして当然だろう。
 でも、世の中の流れを考えてみれば、それほど落胆しなくてもいいのかもしれない。女性の結婚年齢は上昇し、中年期の未婚者も増え、離婚率は上昇している。案外、中年オトコの相手になってくれる異性は多いのかもしれない。また、バツイチ男はもてるという説もある。バツ自体は不幸な出来事だが、妻をもった経験があるから、女性の扱いに慣れているというような根拠であろう。しかし、実際にはそう簡単ではない。はじめから離婚するつもりで結婚する人はいない。離婚は結婚の失敗であり、そこには夫婦生活を維持できなかった何らかの原因があるはずだ。当人は、相手である妻のせいにしたり、仕事や、突発的な外的要因などに原因を求め言い訳するが、オトコ自身に問題がある可能性は残されている。それを自分でちゃんと認識していればまだいいが、そうでないと、再婚しても同じ失敗を繰り返すことになる。事実、初婚者の離婚率に比べ、再婚者の二度目の離婚率の方が高いというのは、日本の統計は知らないけど、欧米では定説となっている。
 その点、妻と死別したオトコは、離婚の失敗を経験していない。中には、素晴らしく、お互いに満足できる結婚生活を営んでいたオトコもいる。後述するように、妻を失った悲しみと愛着を乗り越えてさえいれば、このような男性は、新たなパートナーとも双方にとって満足度の高い結婚生活を築くことができる可能性が高い。
 そのように考えれば、妻死別中年オトコもまんざら捨てたもんでもなく、本人さえその気になれば、案外、良いパートナーに巡り合えることができる。

(続く)

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