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Wednesday, May 20, 2009

父と娘の物語

重松清「ステップ」中央公論新社、2009年4月刊★★★★☆
なんという偶然だろう。これは、もう完全に僕と祐馬の物語だ。
本書を見つけたのは偶然なんだよね。
土曜日の夜、祐馬とふたりでイトーヨーカドーで買い物していて、フードコートの隣にある本屋を通り過ぎる時、たまたま平積みにしていたのを見つけたんだ。帯曰く:
結婚三年目、妻が逝った。残された「パパと娘」の新しい生活

それを見た父と娘の会話。
僕:どうしよう、買ってみようか?
祐馬:...
僕:明日の牛乳とパン買って来るけど、祐馬も来る?
祐馬:ううん、ここで待っている
...と立ち読みしてる。 15分ほどで戻り。
僕:どう、うちと似ている話?
祐馬:ううん、ちがうよ。だって、パパは再婚したいんでしょ?この本のお父さんは絶対再婚しないって言ってるもん。
僕:...(無言)...

桑原繁樹「そして、君はそよ風になった:妻のガン死を乗り越えて--僕と娘の物語★★★☆☆
よくもまあ、同じ状況の本があるものだ。
ステップをアマゾンで探していて見つけたので、ついでにこっちも注文しちゃった。

今日は、名古屋に出張。N700系新幹線で無線LANが始まったというので試してみたけど、僕のPCでは「電波が微弱」ということでうまく繋がらないんだよね。それで、往復車内で2冊読んじゃった。
名古屋の仲間と会うのは久しぶり。優子が亡くなった直後にも会合はあったのだけど僕は欠席した。でも、みんな僕のブログを読んでいてくれるんだ。もうすぐ5ヶ月。始めのころは、みんなも応援してくれていたけど、もう読んでくれる人も少ないんじゃないかなと思いつつ書いてるけど、こうやって、さりげなく、「読んでるよ」と言ってくれる一言がどんなに救われるか。

で、この二冊、読めば読むほど、うちとそっくり。
重松のはフィクションで、桑原のはノンフィクションという違いはあるけど、両方とも
妻を亡くした父親が、娘と悲しみを乗り越えていく物語。
桑原は実体験の物語。8年たっても、この人、まだもがいている最中だよ。ただ、純粋に読んでいて気持ちが痛くなる。
自分より不幸な人の話を聞いて、自分の幸せに気づくというパターンは避けたいと思いつつ、そう感じてしまった。ガンの闘病生活は壮絶を極める。優子がそれが全くなかったもんね。今までは、死にゆくプロセスがある方が、徐々に喪の作業を進めて行けるから、死後の作業が比較的楽で、僕みたいに突然失った方が、その作業が大変なんだと思っていたが、そうでもないみたい。だれでもいつかは迎える死の迎え方としては、優子はベストだったのだと思えるよ。死に向かう苦しみを全く経験しなかったからね。(心臓病のために、死に向かう予感はあったのだと思うけど、それほど切羽詰まった苦しみではなかったはずだ)

でも、どちらかというと、重松の方が、フィクションであるにも関わらず、共感できたような気がする。苦しみながらも、回復するプロセスを鳥瞰的に描いているからかな。その方が、僕に向いているのかもしれない。その点、桑原さんのはまだ痛すぎるよ。 重松さんの本は、他の思春期ものと同じように、暗い題材を扱っていてもなぜか明るくしてくれる。

そう、僕は優子を失った悲しみや寂しさを一生懸命、消し去ろうとしていたけど、そうする必要はないということに気づいたよ。
悲しみを、胸に抱いたまま生きていけばよいんだ。それは、辛いんだけど、 悲しみを否定せず、胸に抱き、そこで繋がることができたら、きっと優しくなれる。
祐馬はしいになったよ。
そう、優子に報告できる日が来るといいな。
そんなことを考えながら最終章を新幹線の中で読んでいると、祐馬からCメールが来た。
祐馬:今日はポカリ買ってきてね!!
僕;わかった。今晩は遅くなるけど
祐馬:冷蔵庫に冷やしておいて
僕:いいよ。
それだけの、何気ないメールの短いやり取りなのに、どんなに気持ちが救われることか。
これから、というか既に難しい年頃に入っている祐馬。
祐馬も僕も、お互いに強がる背後の寂しさで、繋がることができる。

祐馬はママにこれだけ愛されていたし、今は、パパからも、みんなからもこんなに愛されているんだよ。
そのことを、伝えてあげたい。

2 comments:

  1. 名古屋からです。時間を割いて来ていただきありがとうございました。次回を決めるときに「予定はないけど家に居たい。」と言われたときに不思議な安堵感を味わいました。今後ともよろしくお願いします。N

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  2. やさしさをありがとうございました。
    ご迷惑をおかけします。
    こういうの、親から子どもへの分離不安というのかもしれません。

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