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Tuesday, November 17, 2009

長崎での講演

突然にお手紙を差し上げます。
私は11月7日、長崎での先生の講演をお聞きしたものです。長崎新聞で講演の記事を見つけ興味があり参加しました。
どうして、お手紙を差し上げたかというと、先生の講演を聞いてというか、奥さまのことをお話になったことで感動したからです。講演会であんな風に自分の家族の写真を見せるなんて今までありませんでした。
「愛妻家、またはマイホームパパなんだなあ」
という印象を受けましたが、奥さまの死のことを語られびっくりしました。精神科医である前に、ひとりの人間として、自分の悲しみ、苦しみ、どうしようもない気持ちを聴衆にぶつけられたことに、ひどく感銘を受け、心が熱くなりました。まだまだ、奥さまの死を受け入れることができないでおられることでしょうね....

お手紙、拝見しました。
私の話に共感していただき、ありがとうございます。
このようなフィードバックを頂けることがとても嬉しいです。
私も、授業や講演で、よく亡くした妻のことを話しちゃうのですが、今回ほどしっかり率直に私の気持ちを話したのは初めてでした。

どうしてあそこまで話しちゃったのかな??
自分でも不思議です。でも今から振り返ると、いくつか目的があったんだなと思います。これも、今だから考えられることで、講演を準備しているときは、こんなに整理して考えてはいなかったんですよ。

第一に、自分の心のため。
あの日、話し終わった後、疲れたけどとてもすっきりした気持ちになれました。私が表現した感情を、多くの聴衆が受け止めてくれたという実感がありました。一方的に話していても、聞いている人たちの気持ちはけっこうわかるもんなんですよ。私が話しているとき、すすり泣く声が聞こえたりして。それに、最後の20分ほどの質問タイムには多くの人が質問してくれましたよね。中には、ご自身の喪失体験を話してくれた人もいました。うまくいかない講演だと、ぜんぜん質問が出ないんですよ。
ずるいですよね、みんなのためではなく、自分自身のために話して、それで講演料ももらっちゃって。

第二に、「気持ちの使い方」をみんなに体験してほしかったんです。
ふつう、大学教授とか医者の『講演』って、むずかしく、堅苦しいですよね。
理屈ばかり話しているから。

左脳が論理をつかさどり、右脳がイメージをつかさどる。
こういった、よく聞く右脳と左脳の機能局在論はいわゆる通俗心理学というやつで、ぜんぜん科学的根拠はないのですが、比喩として便利だから、あえて使っちゃいますね。
堅苦しい話は、すべて左脳(理屈)を使っているからなんです。
心の問題って、いくら理屈で理解したところで、ぜんぜん解決しません。
いかに右脳(感性)を使えるかということが大事です。
でも、それをこうやって文字で解説しちゃうと、すでに左脳(理屈)なんですよね。
言葉では説明できない。感情は、感情でしか説明(体験)できないんです。
それで、私の感情をみなさんにお見せしたわけです。
妻を喪失しなければ、みなさんに見せるほどの感情はありませんからね。
パートナーを亡くした感情は、だれでもわかりやすいですから。
左脳(理屈)の話をちゃんと受け取ってくれたら、「よく理解できました。よい知識を得ました。」という反応になるでしょう。
右脳(感性)の話をちゃんと受け取ってくれたら、「感銘を受けました。心が熱くなりました。」という反応になるのだと思います。
そういう意味で、私の伝えたいことがにちゃんと伝わったわけで、とても嬉しいです。

第三に、いつでも辛くなったら心の支援を受けても良いんだよ、ということをみんなに伝えたかったのかなと思います。
「いのちの電話」の講演でしたからね。こころを支援すること、支援を受けることがテーマです。
ふつう、心の支援を受けるなんて恥ずかしいし、そんなことするべきじゃない、と感じている人は多いと思います。特に日本では。
だから、あえて私がカウンセリングを受けてますということも伝えたんですよ。
その話をすると、家族も心配するし、ある友人に伝えると、
「おまえ、そんなに具合が悪いのかよ!」
とかなり心配されました。
いえ、そんなに具合が悪いわけじゃありません。別に、カウンセリングを受けなくても、普通の生活はちゃんとやってゆけ(ると思い)ます。でも、よりベターな生活のためには、カウンセリングがとても役立つんです。
北杜夫が昔、自分は「うつ病」だと言いまくり、こころの病を持っても構わないんだという社会認知に貢献してましたけど、そんな気持ちかな。

お返事ありがとうございました。
私の所属する団体のブログに先生の講演の事を取り上げさせて頂きました。すみません、事後承諾になってしまいました。
また、メールさせて頂いてもよろしいですか?

どうぞどうぞ!
また、こうやってブログネタに使わせてもらうかもしれませんけど。

追伸
ふつう、大学教授は理屈(左脳)を表現してメシ食ってますよね。
芸術家・作家・アーティストたちは感性(右脳)をうまく表現してメシ食ってる。
じゃあ、精神科医・心理カウンセラーはどっちなんだ?
ホントは両方使えなくちゃダメなんだけど。

1 comment:

  1. ブログ載せていただいてありがとうございました。
    あの講演会の時、私もお話を聴いて、泣いてたのですが、涙が止まらず、終わった後、どんな顔して帰ったらいいものか、困りましたよ。
    でも、会場を後にしたときは、なんだか心がすっきりしました。

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