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Friday, October 16, 2009

濃密な時間

韓国まで2泊3日の研究会に行ってきた。
僕が主催したのだが、日本・韓国・台湾から4名のeperienced family therapistsが集まり、各国で社会問題になりつつある「ひきこもり」の事例を紹介し合う。昼間、息抜きに観光もちょっとしたけど、基本的には朝から夜遅くまでホテルの広めの部屋に缶詰めになり、議論し合う。ひきこもりは日本特有の問題なんですよ。他の国にも同じような現象は見られるけど、日本ほど大きな問題になっている社会はない。そこに、最近、韓国や中国文化圏でも問題になってきている。国内の研究者だけが集まって、同じ文化の枠組みの中で話し合っていると気がつかない文化的前提も、違う立場stand pointsから話し合えるので、なぜひきこもりが日本に多いの、という文化的前提まで掘り下げることができる。
 また、以前(構造主義)は、科学者(セラピスト)が中立で客観的な立場が必要とされたが、最近(ポスト構造主義)では、そのような立場をとらず、セラピスト自身の物語も必然的に関与しながら語る中で、対象(たとえば「ひきこもり」)の(真実ではなく)物語が見いだされていく。
 したがって、研究対象の事例を話す前に、我々の個人的(文化的・ジェンダー的)体験を話し合う。今回集まったメンバーはすでにこの1年間ほどの間に3回集まっており、十分に親しい。特に優子が亡くなった翌月に集まったーメンバーと同じだ(2月3日「やっとひと月」参照)。今から読み返しても、ひと月後に、よくこんなこと出来たなあ!!その後の僕の経過なんかも話して、お互いに安心して話し合える信頼関係をしっかりと作る。
 ふつうの学会だと、自分のやってきたことを短い時間にまとめてさらっと紹介するだけだが、この研究会は、話し合うプロセス自体が研究対象となる。じっくり深めた会話を録音、テープ起こしして、さらに分析するんだ。

 帰ってきた翌日はクリニックで患者さんと向き合う。
 ある、うつ病の20代女性は、自分が親から見捨てられるかもしれないという不安を僕に話してくれたのだけど、その気持ちを怖くて親に伝えることができずにいた。
「大丈夫、私がついているから、話してごらん。きっとわかってくれるよ」
付き添いで来ていた母親を診察室に呼び入れ、女性は打ち明けることができた。

 こんなことばかりやってるからなあ。これは職業病ですな。
 あいまいな部分を深く突き詰め、言語化してはっきり浮き出すことによって問題を解決しようとしてるわけですよ、結局。

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