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Friday, March 18, 2011

祝辞

卒業生のみなさん、ご家族のみなさん、本日は本当におめでとうございます。
今年は私が主任でして、慣例に従い、教室の先生方を代表してひとことお祝いの言葉を述べさせていただきます。
授業でみんなにしゃべるときはこんなことしないんだけど、ほら、今日は原稿まで作っちゃったよ(笑)
今年の卒業式は、全体の式も、夕方の謝恩パーティーも中止という変則的な卒業式になり、とても残念ですね。
我々は未曽有の大災害に直面して、今、日本中が危機状態にありますね。
今日は、危機について話そうと思います。
危機は英語でいうとCrisisです。漢字をバラバラにしてみると危険dangerのと、機会chanceのが組み合わされていますね。危機とは危険という代償を払って、新たなチャンスが生まれる可能性を秘めているんです。

十数年前に、阪神淡路大震災が起きた時、私も現場に行き、一週間ほどでしたが心のケアのお手伝いをボランティアでやってきました。復興のお手伝いをしようと、全国から多くのボランティアたちが集まり、新たな人と人との繋がりが生まれましたた。

今回は、津波が収まった後も、今だに原発の危険が続いています。今後どうなるのかとても不安ですが、それを乗り越えて、きっとこれからすごい勢いで復興していくでしょう。日本国中の人たちが心配し、みんなが力を合わせて危機を乗り越えようとしています。
私はいつもメールやツイッターを活用しているのですが、震災の後は、安否を確認したり、震災関係の情報がたくさん流れてくるようになりました。

みなさんにも話したと思いますが、私も2年前に個人的な危機に直面しました。21年間つれそった妻を突然の心臓まひで失ったんです。
それから、私の心の復興が始まりました。どうやって復興したかというと、多くの人たちとつながって、悲しい気持ちを出しまくりました。カウンセリング、普段は私がカウンセリングをする立場なんですが、逆に受ける立場になり、また子どもたちや同居している両親にも助けてもらいました。
ああ、この話ね(苦笑)。原稿に書いちゃったから、恥ずかしいけど話しますけど、、、
私が君たちくらいの大学生の頃、付き合っていた人がいて、その人と別れたんですよ。ふられちゃったんですけど。その元カノとは、なぜかその後もずっと年賀状だけはやりとりしていて、私の妻が亡くなったことを知ったら、すぐに「がんばってね~!応援してるから」とメールをくれたんです。いえ、別に会ったり復活したわけじゃないですよ(笑)。でも、私のブログなんかも読みに来てくれて、遠くから強力なサポーターになってくれているんです。

そして、二年経ち、新たな旅立ちの決心をしました。大学を辞めて、もともとやっていた精神科医の仕事に戻るんです。大学の先生というのは、みんなとも出会えたし、とても魅力的な仕事です。でも、私が本当にやりたいのはなんだろう、私が持っている専門性を生かせるのはやはり精神科の臨床だろうと、実はずっと前から何となくそう思っていました。そして、妻を失い、自分の残りの人生のことを考え、ようやく決心がついたんです。
だから、私もみんなと一緒に大学を卒業するんですよ。みんなは4年間、あるいは2年間。私は19年間です。でも、みんなの4年と私の19年は密度的にいえばだいたい同じくらいかもしれませんね。

卒業・修了するみんなに向けて、旅立ちのはなむけの言葉を用意しました。
それは、
失敗や苦悩を避けてはいけない。しっかり向き合いましょう。
ということです。
これからみんなは、人生の船出。社会人となり、長い人生が待っています。ずっと成功して幸せでい続けるなんてことはまず絶対ありえません。必ず失敗したり、苦悩したり、挫折を経験するでしょう。
よく、学生は失敗が許されるけど、社会人は失敗が許されない、なんて言いますね。
失敗しないはずないですよ。みんな、たくさん失敗しています。もしみんなが失敗していなければ、世の中は矛盾なく平和のはずでしょ。みんながたくさん失敗してるから、そうしないように努力して、お互いに補い合っているのが社会です。
もちろん、社会人になれば、失敗に対して責任が伴います。たとえば、みんなが教師になって失敗すれば、子どもたちに直に影響が出ます。その責任をとらねばなりません。
失敗・苦悩・挫折に直面したら、人とつながってください。自分ひとりでがんばろうなんて思ってはダメです。人に助けを求めてください。そのこと自体が、新しい力を生むんです。

君たちが一緒に卒業するこの仲間、大学時代の仲間は一生涯の貴重な資源になります。私も、大学時代の友人たちにたくさん助けられています。
それに、先生たちのことも忘れずにいてくださいね。
順風満帆の時は忘れていて良いです。目の前の現実を進んでください。
でも、逆風になったとき、古巣に戻っておいで。先生たちはいつでも待っていますよ。
私の教え子たちも、普段は音沙汰がないのに、私が辞めると聞きつけると、みんな連絡してきます。タム研という自分のふるさとはずっとあると思っていたのに、なくなっちゃうのはさびしくなるみたいです。
卒業しても、ここはみんなにとっての故郷です。いつでも、必要なときは戻ってきてください。

以上、卒業するみなさんへの言葉を述べさせていただきました。
本日は、本当におめでとうございます。

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