Send your message to lettertoyuko@gmail.com


Tuesday, October 25, 2011

喪失の耐性

だんだんと紅葉が美しい季節になって来ております。
パンフレットを御郵送いただきまして、どうもありがとうございました。ホームページを拝読させていただきまして、御開業までいろいろご苦労なさりながら、今日までに至っていらしたことがよくわかりました。
研究室のパンフレットを頂戴いたしました時から、ずっと優子ちゃんのことを思い出させていただいておりました。
OB・OG会のとき、ボーイズをそっちのけで、二人でお話していたこと。
優子ちゃんからの同時通訳者の御相談を電話でいたしたこと。
でもTiki様は優子ちゃんの深いお悲しみからは、前向きに歩んでいらっしゃったのですね。

心温まるメールありがとうございます。
開業できたのも、優子のおかげと思っております。
数年前から、いずれは開業したいと思っていたのですが、前の大学の職もそれなりに居心地がよく、リスクを冒してまで転職する動機づけは持ちえませんでした。それでも、優子が亡くなる2ヶ月ほど前にふたりで開業フェア(これから開業を目指す医者向けの関連企業展示会のようなもの)を覗きに行ったりしていました。

そして優子を失ったことに向き合う中で、喪失に対する耐性のようなものができてしまったように思います。もう失うものは(子どもたちを除いて)何もないといった開き直りでしょうか。現状維持に躊躇する理由もなくなりました。優子が小さい頃からの夢だった通訳者に転身したことを見習い、思い切って自分自身を前に進めることにしました。心が平穏であればもっと落ち着いて現状を自然に受け入れ、留まっていたのかもしれません。普通にしていたらバランスを失ってしまいそうな不安感から、一生懸命前に漕ぎ出してバランスを保とうとしているのでしょう。

優子を失った深い悲しみを体験したことは、私の仕事にはプラスになったかもしれません。患者さんたちはとても深いマイナスな気持ち(悲しみばかりでなく、不安、恐怖、怒り、自信喪失など)を抱えています。正直、私は今までの人生でそれほどの辛さを体験してきませんでしたので、患者さんたちの話を伺って客観的に理解・共感するしかありませんでした。優子を亡くしたおかげで深い悲しみはどういうものであるか、言葉では言い表せないものを、自分自身で体験することが出来ました。そして、それをどうにか乗り越えることが可能なんだということも、何となく体験している最中です。人を失った悲しみは、人によって救われるのだということを身近な家族や友人などと交流する中で体験することができました。
今までは理論と他者と関わる体験からしか得られなかった本当の癒しのすべを、自分自身が体験することで、精神科医としての深い自信につなげられるのではないかと漠然と感じています。

No comments:

Post a Comment